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話題の電子書籍「村上さんのところ」を買ってみた

こんにちは、プロデューサーの岩田です。

いまや毎年ノーベル文学賞候補にあがる村上春樹氏。私は熱心なファンとは言えず、全作品を読んでいるわけではありませんが、昔からそれなりに親しんでいます。

いちばん好きな作品は怒られるかもしれませんが「かえるくん、東京を救う」という短編。なんというか、笑い(かなり爆笑)と悲しみと怒りと希望が凝縮された感じ。わずかなページ数でこれだけの感情が湧く小説は、かつて読んだことがなかったです。

しかし実は、軽く読めるエッセイ系をいちばん読んでたりします。
そのなかで異色なのが、メールで寄せられた読者のあらゆる質問に村上氏が縦横無尽に答える「村上さん」シリーズで、私はこれが大好き。
作品や人生についての真面目な質問。趣味についてのディープな質問。あるいはせっかく彼に質問する機会なのによくこんなくだらんことを...という質問。あらゆる問いに、あるときは真摯に、あるときはクールに、あるときは独特のユーモアで「村上さん」が答えてくれます。

ちょっと手元の本から質問をピックアップしてみます。

●他人の携帯電話を見たことはありますか?
●初心者におすすめのジャズアルバム
●友達が5人ほしい

こんな感じの質問と回答が書籍になるわけですが、これまで青本、赤本、緑本の3冊が朝日新聞社から出てました。
読んでいてじわっと来た記憶も、電車のなかで笑いを噛み殺した記憶も一度ならず。何より、ハッとさせられるようなひとことや、いままでやり過ごしていた何かについて考えるきっかけが詰まっています。 以前、離婚して落ち込んでいた元社員に「ここ読んでくれたらいいかも。。」と思いながらこの本を貸してあげたことを思い出します。しかし、本人はそこじゃなく他のところで元気づけられたかもしれない。。そんな本です。

さて、そのシリーズの最新版が、今回は新潮社から出版されました。 面白いのは紙の本と電子書籍を同時発売すること。本は全部で37000以上あった質問から473問の回答を、電子書籍はその7倍以上の3716問の回答を収録とのこと。

これはすごいです。私の手元にある前回の緑本を見ると、490問収録。
これで既に分厚くボリュームたっぷりな感じですが、さらに7倍の収録ということで気が遠くなる膨大さです。
比較すると

<本>
価格:1300円
収録数:473問
特典:フジモトマサル描き下ろしイラストマンガ51点を収録

<電子書籍>
価格:希望小売価格 2000円
収録数:3716問
特典:村上春樹撮影の書斎空間の写真を収録

だそうです。

今日はその電子書籍版を買ってみました。
私はiOS版のKIndleを使ってるので、アマゾンで見ると、10%引きの1800円で販売中。 ちなみにkoboでは2,000円BookLiveなどでは2160円でした。
確かに「希望小売価格」です。

アマゾンで1クリックで購入してさっそくダウンロード。さすがに重い。WIFIじゃないと厳しいです。

こちらが表紙。 フジモトマサルというイラストレーターさんの絵ですが、昨年亡くなった安西水丸さんのイラストがやっぱり懐かしい。

murakami_01.jpg

目次は「掲載日順」と「テーマ別」、そして「タイトル一覧」になっています。

murakami_031.jpg

「タイトル一覧」はいつまでめくっても終わりません。それもそのはず、割り算すると目次だけで二百数十ページになります。

murakami_02.jpg

読みきるのに当分かかりそうで嬉しい。。
※ガイドによれば、読み終わるまでの平均的な時間は140時間27分だそうです。すげー。

さて、電子書籍化への対応は東野圭吾さんや宮部みゆきさんら超人気作家が認めないことを表明していますが、村上さんは「本と電子書籍の価値を変え、両方買うもよし片方だけ買うもよしとする」方法を今回試したわけです。

つまり、
1)熱心なファンは、シリーズ保存用と全問読破のためもちろん両方買う
2)私のようにくまなく読めれば満足な客は、電子書籍版を喜んで買う
3)電子書籍のプラットフォームになじめなかったり紙の本に価値を見出す人は、本を買う

と、さまざまな顧客に対応しています。

おそらく2に該当する私のような人は本を買いませんが、3の人は今後完全版が読みたくなり、電子書籍版を買い足す可能性があります。
紙、電子の両版とも、これで売れる機会は最大化するというわけです。

この本は小説でもエッセイでもないため、おそらく村上さんの本としては爆発的に売れる本ではないと思います。
ただ新しいやり方によって「電子書籍版による上乗せってどのくらい可能なのか?」を試してみるには格好の機会だったのではないかと。
どんな結果になるのか気になります。

では、今日からさっそく読み始めます。