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Amazonで「松岡正剛」と検索したら、思いがけず良い本に出合った

Amazonで検索していると、ときどき思わぬ掘り出し物を見つけるときがある。つい先日も、そうだった。「松岡正剛」と検索をかけたら、思いがけず良い一冊に出合ったので、紹介したいと思う。それが、この本。


本書は、なによりタイトルがいい。書けなくて困っている人の肩のチカラを、ふっと抜いてくれるかのようだ。

著者の藤原智美さんは、『運転士』で第107回芥川賞受賞の、すなわち芥川賞作家(僕は存じ上げなかったが...)。作家の文章読本というと、小説家志望じゃないと役に立たないのではと思ってしまうが、しかし、本書は違う。ごくフツーの会社員や学生に、実に小気味よく、やさしい文体で、文章を書く心構えやテクニックを手ほどきしている。実は藤原さんは、大学卒業後、『週刊大衆』の記者からスタート。その後もクルマ雑誌や商業分野、ノンフィクションなどフリーライターとして数多くの現場で叩き上げられ、小説家に転身した。それゆえか、文章とは「こうあらねばならない」という傲慢さはまるでなく、むしろ「こんな感じでいいんですよ」と見識の広さと懐の深さを感じさせてくれる。本書中でも、企画書の書き方にもふれており、ごくフツーの会社員にも参考になる部分が多いだろう。

まえがきが印象深いので、引用してみたい。

もしあなたが「思うように書けない」「自分は文章がヘタだ」という自覚があれば、まずそれだけで、上手に書くことの第一歩を踏み出しているのだ、と思います。反対に「私には文才がある」「俺ほど文章がうまいのは、この会社にはいない」などと心のどこかで少しでも感じているとしたら、この本は役に立たないので、すぐに棚にもどしてください。


会社でブログを立ち上げたのだけれど、何をどう書いたらよいか、わからない。コンテンツマーケティングやオウンドメディアに取り組みたいが、記事を書き続ける自信がない。そんな方に、ぜひおすすめしたい一冊である。

▼目次チェック!(目次抄録)


まえがき 「書けない」が「書くこと」の第一歩/「書くこと」は恥じらうこと

第1章 あなたは9歳の作文力を忘れている文章の本質は「ウソ」である/プロはこうやって文章力を鍛える/小説とノンフィクションの違いとは/書く前にカメラの位置を決める/読み手を特定の一人に絞って書く/ボキャブラリーは本当に必要かetc

第2章 プロ作家の文章テクニックすべてを書いてしまわず、次の日に繰り越す/文は一行目から書かなくていい/逆接以外の接続詞を外す/鬱、薔薇......難しい漢字は記号にすぎない/短い文章には「メイン料理」だけを選ぶ/「余談だが」「ちなみに」には手を出すなetc

第3章 名文の条件とは何か名文かどうかは、風景描写でわかる/著者の顔が見える作品は、つまりはダメな作品/つくり話こそ、小道具が必要/文章は、真似から始まるetc

第4章 日常生活で文章力を磨くワープロか、それとも手書きか/集中力は音楽でつくる/朝には朝の、夜には夜の誘惑が/1、2行の日記でも文章はうまくなる/メモにも必ず、年月日を記入する/料理のレシピの難しさとは/伝えたつもりだが、伝わっていないetc

第5章 検索、コピペ時代の文章術コピー&ペーストが文章を殺す/ランキング思考で直観力が衰える/キュレーションとは何だろう/タイトルの一人歩きに注意する/ネット辞書との付き合い方を考える/縮小のスパイラルの末、誰が残るかetc

第6章 書くために「考える」ということタイトルに悩むときはどうするか/数字のウソに気をつけろ/その図は文章にできますか/記事に主張が盛り込まれているか/資料におぼれるな/書きたいテーマが見つからない/心に引っかかったピースをすくいあげるetc

あとがき デジタル化時代の「書く」ということ

まとめ


忙しい人は、まず目次を見て、ピンとくるところから、拾い読みしても十分役に立つはずだ。特に、本書の後半は、藤原さんも少々チカラが入ってしまったのか、クドくなっている部分もあるが、それもご愛嬌。作家が文章読本を書くとき、すなわち、その行為は自分の文章術や文章に対する考えを整理していることに他ならないから。

最後に、本書から、僕が心に留めた3つの文章を紹介して、終わりたい。

・文章を書くということは思考するための方法でもあります。

・実は書き手として、みんながランキングに依存しているときこそ、直観力を発揮するチャンスです。......「このブーム、何かがおかしい」ということがいえるかどうか。そこが腕の見せどころといっていい。

・書き手のなかに眠っている感覚や思いは言葉や文章によって命を吹き込まれ、読み手へと伝わり、そこで「化学反応」を起こすということでしょうか。
(菊地)